多くの時代劇をプロデュースしたことで知られる能村庸一さんが左腎細胞がんのため、東京都内の病院で死去されたというニュースが舞い込みました。亡くなったのは2017年5月13日。76歳でした。

能村庸一さんは、「鬼平犯科帳」や「御家人斬九郎」、「剣客商売」などの人気時代劇を数多くプロデュースされました。プロデューサーとして活躍される前は、なんとアナウンサーとして活躍されていたそうです。

今回は、能村庸一さんの経歴について調べてみました。また、著書を紹介したいと思います。

また、これらの調査を通じてみえてきた、時代劇が抱えていた苦悩を紹介したいと思います。

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能村庸一さんの経歴

能村庸一さんは、東京都生まれ、青山学院大学を卒業され、1963年にフジテレビに入社されました。採用枠はアナウンサーです。同期アナウンサーには、フジテレビのアナウンス部部長などを務められた露木茂さんなどがいらっしゃいます。

その後編成企画部、開発調査部などで活躍されたのち、時代劇ドラマの企画制作を担当されることになります。

ここで生み出されたのが、「鬼平犯科帳」、「仕掛人・藤枝梅安」、「八丁堀捕物ばなし」などのヒット作。

1990年代のフジテレビ時代劇の企画、プロデュース業に対して、ギャラクシー賞テレビ部門特別賞を受賞されています。

このギャラクシー賞は、放送批評懇談会が運営するもので、日本の放送文化の質的な向上のために、優れた番組や個人・団体を顕彰するものです。

このギャラクシー賞、応募作品だけから選出されるのではなく、放送批評懇談会会員から選ばれた選奨事業委員会が独自に番組を推奨する仕組みで選ばれます。

また、審査の瞬間だけではなく、年間を通じて番組や作品が審査されるという特徴もあり、本質的に優れたものが選出される名誉ある賞です。

最新の第54回ギャラクシー賞テレビ部門では、話題となった火曜ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」などが受賞しています。

能村庸一さんの著書代表2作を紹介

能村庸一さんは、自身の時代劇プロデュース業を通じた経験やテレビ時代劇の歴史などを本にもまとめられています。

代表的な2冊を紹介したいと思います。

テレビ時代劇史

まずは、テレビ時代劇史。こちらには、テレビ時代劇の初期から、全盛期、テレビでレギュラー番組がなくなるまでの衰退期をむかえるまでの歴史が描かれています。

制作にかかわったプロデューサーを中心とする80名の関係者への取材結果、これに自らの経験を加えて日本の時代劇の変遷がまとめられています。作品の制作秘話なども書かれていますよ。

また、渡辺謙さんの時代劇作品の写真が多く掲載されており、渡辺謙さんファンにはうれしい構成となっています。

時代劇ファンにとって、必携のバイブルとの呼び声の高い本です。

時代劇の作り方

つづいては、時代劇の作り方。本書は、2011年7月に発行されました。本書は、春日太一さんとの共著ですが、内容は、能村庸一さんがプロデューサ人生を余すことなく語ったインタビュー内容を春日太一さんが本にまとめたもの。

能村庸一さんが抱く時代劇への想いと、制作秘話がかかれています。

前出の実録テレビ時代劇史が、テレビ時代劇の変遷にフォーカスが当たっているのに対し、本書は、能村庸一さん自身の歴史を中心に書かれています。少年時代から、フジテレビ入社のいきさつ、プロデューサーになったきっかけや、俳優たちとの関係や裏話、関連作品についての思い出話等々、時代劇を見るだけでは伺い知れない裏話が満載です。

石橋蓮司さんんとのスペシャル対談が含まれており、これがおもしろかったというコメントが多くあります。

時代劇の抱えた苦悩

よく考えると、最近のテレビ番組表の中に民放レギュラーの時代劇枠がありませんよね。長年親しまれた水戸黄門すらいつの間にか姿を消しています。唯一残っているというのがNHK大河ドラマ。

このような状況になった原因は、時代劇は現代劇に比べ製作費がかさむ、スポンサーが付きにくく、視聴者の多い時間帯での放送が難しい。視聴者側にも時代劇を見る知識が不足しているといった問題重なり、負のスパイラルが構成されてしまったからだと言われています。

テレビ局は慈善事業を行っているわけではありませんから、成果を「視聴率」という形で求めることに対して批判はできません。

ただ、この結果、良いものが必ずしもヒットしないという事態に陥り、視聴率が稼げななかった時代劇は長く苦しんでいたのでした。

こんな中、亡くなった能村庸一さんは、制作会社のアイディアから知恵を汲みあげる工夫をされたり、苦しいときこそ腹をくくり、「良さ」を正しく理解できる視聴者に向けて仕事を発信する、という強い信念で成果第一主義と闘いながら、時代劇を世に生み出されていたのでした。

まとめ

今回は、能村庸一さんの訃報に触れ、能村さんの経歴や著作について調べてみました。

調査をする中、能村さんが身を置かれた時代劇の抱えていた苦悩が見えてきました。

この苦悩は、視聴者のニーズの多くが、時代劇を求めなかったことに因ります。これは仕方のないことだと思いますが、この結果、良い物が消えていく、良い物が作れなくなるという事実はについてはなんだかさみしい思いがします。

現在は、ケーブルテレビや下の動画視聴サービスなどの時代劇専門チャンネルがニーズをくみ取って視聴者を集めており、これは、時代劇自身の良さがなくなった、理解されなくなったという訳ではなく、単にテレビというカタチが合わなくなっただけだ、ということを示しているのでしょう。


今回のニュースはわたしにとって、「ふだん何気なく眺めているテレビ番組、実は非常に奥が深い」そんな事実に気が付くきっかけになりました。